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やはりそんなものだったか [音楽]

ターフェルクラヴィーア
我が家にターフェルクラヴィーアがやってきた。
とツレアイが書いてから1ヶ月ほど経つ。
その間、自分たちで出来る小さな分解・サビ取りなどは試みたが、どうしてもアクションが引き出せない。「家具」としてなされたらしい全面ニス塗りが可動部分をフレームにがっちり固定してしまっている上に、道具がないとどうも取り出せそうもないのである。
加えて正しいチューニングハンマーがないので、調律も出来ない。

情報を求めてインターネットアンティークピアノやその部品を扱っている会社のサイトをみていたら、ディーラーの中にマインツの大手ピアノディーラーであるアレクサンダー・ムジークがあがっていて、「修復請負」のマークもついているのを見つけた。

あんまり期待は出来なかったけれど、とりあえず聞くだけでも、とアレクサンダー・ムジークを訪ねてみると、立派なショールームの大きな机に座った秘書が親切に相手をしてくれた。幸い、英語で話が出来たので、変な相談で申し訳ないのだけれども、と断った上で、状態の悪いターフェルクラヴィーアを入手したこと、大して価値はないと思うけれどもすこしでも状態を改善できたらと思うこと、作成したメーカーについてわかることがあれば知りたいことなどを説明してみた。彼女はとっても親切で、技術者は専門家であり、ターフェルクラヴィーアについてもよく知っているし、どのくらい価値のある楽器か、どういう修理がいくらくらいで行えるか詳しく説明してくれるという。もし修理を行うことになれば初回の見積もりは無料であり、行わないことになっても最大50ユーロ程度。英語もしゃべってくれるという。

そんなわけで、50ユーロなら、まあドブに捨ててもいいかなと思い、お互いの都合を相談して、2週間先くらいに予約をとった。


ということで、昨日。

それなりに期待に胸を膨らませ、アイボウも研究室に行くのをさぼって家で待っていると、約束の時間を15分ほど過ぎて技術者が現れた。

ピアノの前に案内すると、いきなり「ターフェルクラヴィーアか」。

え、こっちの話全然伝わってないわけ?

彼は上半分くらいさらっと音階を弾いてみるとすぐに、弾ける状態にはない、修復には4、5万ユーロかかるがその価値はないというようなことを言い出した。「ドイツ語がよくできないから英語でしゃべりたいんだけど」というと「僕も英語はあまり出来ないからできればドイツ語で」という。結局、すこししゃべってみて、こちらのドイツ語レベルの低さを悟ってからは英語に切り替えてくれたけど、これも秘書に言ったことが全然伝わっていない。

もうこの時点でかなりあきらめが入っていたが、すこしでも知りたいことを聞き出そうと、いろいろ質問してみたが、アクションの引き出し方もわからないという。「モダンピアノだったらここが開くんだが」とか、聞かなくてもわかっていることしか言わない。

あげくには、我が家のすぐ隣にあるカバレ・アルヒーフにターフェルクラヴィーアが一台あって修復してあるけど、マインツではそれしかみたことない、なんていう。「たぶん、同じメーカー」なんて言ってたけど、かなり嘘くさい。
150年くらい前の楽器だと思う、なんてさらっというけど、それは多分古すぎ。

無駄と知りながら、このメーカーのこととか、生産当時のランクとかわかるか聞いてみても、もちろんぜんぜんわからないようだ。それどころか、「スタインウェイのスクエアならたくさんあるしなんとなくわかるけど、ぜんぜん知らないメーカーだから」とこちらが言うと、「スタインウェイのターフェルクラヴィーアがあるなんて知らない」という。こりゃだめだ。ピアノの歴史ちゃんと知ってる?
「ターフェルクラヴィーアはほかの街でいくつかみたことあるけど、もっとずっと状態が良かった」とも。状態がいいピアノだったらそもそも出張を頼んでないんですけど……

結局15分くらいいてもらったが、何一つ得るものもなく、35ユーロ払って、帰ってもらうことになった。



たしかにターフェルクラヴィーア(スクエアピアノ)は、廃れるだけの理由のあった楽器だろう。
我々が購入した楽器は、おそらくもともと大した価値のある楽器じゃないし、しかも長期間放置されて修復が必要なのは明らかだ。修復をしたところで、新品のアップライトよりも弾きにくい楽器ではあるだろう。音も現代の基準に照らせば「いい音」では鳴らないかもしれない。

でも、手を入れれば確実に今よりもいい状態になるのも確かだ。今でも多くのキーは音を鳴らすことが出来るし、連打だってできる。
そしてブラームスやリヒャルト・シュトラウスが作品を書いていた頃、人々はこんな楽器を使っていたんだなあと知ることも出来る。

そんなのは酔狂なのかもしれない。道楽なのかもしれない。調律師やメーカーにとっては利益の少ないビジネスかもしれない。ドイツ語も出来ないのに、この地でそういうことを頼むのは無理な相談なのかもしれない。

でも、調律師がそういうことに対してとても冷淡で、無関心だということは、とても悲しかった。
そんな調律師しかいないのに、「もちろんターフェルクラヴィーアにも詳しいです」なんて軽々とにこやかに答える秘書にもとても腹が立って、そんなものだとわかっていたのに期待して楽しみにしていた自分も情けなくて、ドイツ語がぜんぜんできないのも悔しくて、一日、ため息をつきながら過ごしてしまった。

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コメント 3

maya

残念ですね。

ドイツやイタリアは楽器をとても大切にしている国だと
私の勝手な思い込みですが、ある種、尊敬の念を持っていました。
一般家庭はともかく、調律師がそれではがっかりです。

一日も早く、音が出ると良いですね。
楽器もそれを望んでいるはず。

by maya (2009-03-21 16:23) 

青竹

そうですね。

ほとんどのキーは音が出るんですよ。連打もできるし。私としては、鳴らない幾つかの音が鳴るようになって、調律してもらって、そこそこ弾ければとりあえずは満足なんですが、彼からすると、彼にとっての「最高の状態」から遠すぎて、話にならなかったんだと思います。

でも、楽器って、最高級の完璧に調整されたものを唯一の頂点とする世界ではないんじゃないのかなと思うんです。

もちろん、すぐれた楽器はすごくいいし、いい楽器で弾くとうまくなる、というような考え方もなんとなく実感があります。彼には直せない、あるいは直すのにかかる金額の価値はない、という判断も仕方ないと思います。でも、こういう楽器がたくさん生産されることによって、ピアノという楽器とピアノや類似の鍵盤楽器を通して表現される音楽が普及したこととか、100年以上前にこのピアノを買った、あるいは買ってもらった人がいて、大事に弾いてきた人がいて、そしてここにある、ということにたいして、余りに冷淡なことがとても残念でした。
by 青竹 (2009-03-23 21:29) 

青竹

この楽器は結局、マインツを引き払う時に処分した。

転居近くなって、数学者でチェリストでもある大家さんに、実はターフェルクラビーアを買ったんだけど、どうしたらいいだろうか、と相談したところ、かなり呆れられつつも(特に大家さんのパートナーは目を剥いていた)、ebayに出品するのを手伝ってくれた。160ユーロで買った楽器だったが、売れたのは1ユーロとかだったと思う。
でも、落札したのはアンティーク楽器を専門に扱っている人たちで、落札後すぐにカップルでやってきてささっと楽器を引き取っていってくれた。そのままリストアとなったのか、部品取りになったのかは知る由もないが、きっとそれなりに幸せな末路となるだろうと期待できる結末で、最後はいい思い出になった。
by 青竹 (2015-05-28 11:28) 

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